野球少年からコロナ禍を機に動画マーケティング事業の道へ
――起業されるまでの経歴について教えてください。
昔から将来のことをあまり考えずに生きていて「野球で飯が食えたらいいな」くらいの感じでした。小・中学生の時は軟式野球をやっていて、高校は強豪校ではない普通の公立高校でしたが、21世紀枠で選ばれて、ベンチメンバーで甲子園に出場したこともありました。
大学に入ってからも大学野球をやっていましたが、さすがにプロは無理だと思い、進路についてはなんとなく面白そうな業界に入りたいぐらいの抽象度で考えていました。ところが、大学3回生の春にコロナの第1波が来て、授業も部活もなくなり、お小遣い稼ぎのために動画制作の個人事業主をスタートしたんです。1年休学を挟んでその2年後に、今の株式会社アカシアを立ち上げました。
当初はWeb系や広告、出版企業への就職も考えていましたが、参加してみたインターンシップが思っていたよりも面白くなかったのでやめました。指示されて動くのが好きでなかったこともあり、そもそも会社という組織自体が向いていなかったのかもしれませんが、あまり魅力を感じなかったのです。
――動画制作やマーケティングに目をつけた理由は何ですか。
率直にいえば、動画制作が簡単そうで自分にもできると思ったからです。当時はプログラミングも流行っていましたが、大学の授業を受けてもあまり深く理解できませんでした。ほかにもブログで稼ごうとして200記事くらい書いたこともありましたが成果が出ず、そんな中で取り組みやすさを感じたのが動画制作だったんです。
個人のYouTuberは自分で編集する方が多いですが、ちょうどコロナ禍で企業がYouTubeを始める例が増えてきており、動画編集を外部委託する文化が生まれた頃でした。その点でいうと、タイミングは良かったと思います。
実際に、SNS経由でひたすらDMを送り、お仕事をいただけるようになってきたんですね。
そこからマーケティングも手がけるようになったのは、1年間くらい動画制作を続けているうちに、お客様にとってのメリットをより追求したいと思ったからです。お客様が欲しているのは単なる動画だけでなく、どうすれば売上を伸ばせるかという戦略なのではと考え、それに自分をアジャストしていった結果です。
――起業されてから挫折や失敗した経験はありますか。
細かいことは多分いっぱいあるんですけど、印象的なのは1期目のときに交際費を使いすぎたことですね。社長さんを飲みの場に引っ張っていって、楽しんでもらって、そこで仕事をもらうみたいな、本当に泥臭い営業をやっていたんです。良いお店に連れて行っていたら、その分お金がかかるわけじゃないですか。それで、えらいことになったっていうのがありました。
顧客にコミットした戦略で億単位の売上を達成
――事業内容について教えてください。
主な事業は、動画マーケティングです。YouTubeの運用代行をメインに、ショート動画、例えばInstagramのリールやTikTokの運用、動画や映像の制作を行っています。さらに、弊社はマーケティング全般を包括的にサポートするというスタンスなので、例えばWebサイト制作や、公式LINEの作成も対応します。
――主な事例や実績について教えてください。
大きな実績は、株式会社ノックス様と株式会社HATSUHARU様です。ノックス様はSEOの会社で、2年前からYouTubeの運用を始めました。その頃はBtoBでYouTubeを活用する企業は少なかったのですが、結果的には1年間でYouTube経由の売上を約2億円までに伸ばしました。
HATSUHARU様は婚活関連の会社で、戦略部分をすべて任されており、一部動画制作も担当しています。僕が入った時点ですでに15万人の登録者がいましたが、伸びが停滞してしまっていました。それが今では毎月YouTubeから約2,000万円の売上があり、年間で2億円規模を売り上げるチャンネルになっています。
成果の秘訣をシンプルにいえば、「視聴者が求める内容」と「コンテンツが届ける内容」との乖離を埋めることに注力しただけです。顧客へのヒアリング、視聴者の反応や市場全体の動向分析などを通じて、視聴者や顧客のインサイトを深掘りした動画コンテンツを企画し、構成や喋り方などYouTubeに最適化したフォーマットを構築しました。
ほかにも、Instagramのコンサルティングを行っている企業様で、1本目の動画がいきなり20万再生を叩き出した実績もあります。
――強社ポイントを教えてください。
目先の数字にとらわれず、お客様の目的をダイレクトに捉えた施策を提案できることです。例えば、多くのYouTube運用代行会社は「YouTubeの再生回数を伸ばします」「TikTokのフォロワーを増やします」「SEOで検索上位にします」といった成果をアピールしますが、僕はそれだけではまったく意味がないと考えています。
企業の目的は、基本的に売上アップかコストカットの二択なわけですから。極端な話100万回再生されたとしても売上が0円だったら意味がないし、逆に再生数が1回でも売上が1,000万円上がったらそれで良いわけです。
だから、弊社はお客様の目的の部分にコミットすることしか考えていません。YouTubeが目的達成の手段として適していないならほかの施策を提案しますし、最適だと判断すれば全力で取り組みます。このように、目的に合わせて柔軟に施策を変えられるところが弊社の強みだと思っています。
いつか日本のSNSやWebマーケティングを牽引する存在に
――今後のビジョンについて教えてください。
弊社のお客様の中には、お客様同士でつながり取引することで、売上をつくっている企業様もいます。今後も引き続きお客様を増やし、弊社が媒介となって、多くの企業の事業を発展させられるような会社を目指したいですね。
会社売却などには今のところ興味がないので、どんどん会社を成長させ、日本全体のSNSやWebマーケティングを引っ張っていけるような企業になりたいと思っています。そのためにも、まずは目の前の課題を一つひとつクリアしていくつもりです。
個人的には、自分の親、子供、孫が誰一人働かなくても僕だけで養えるようにすることが、個人事業を始めたときからの夢です。
――仕事上で大切にしているスタンスを聞かせてください。
僕はお客様に対してあえて結果を保証していません。マーケティング施策にはどうしても当たり外れがあり、絶対的なものは存在しないという前提をいつもはじめにお伝えしています。ただし、伸びなかった場合の施策は全力で考え抜きます。
例えば半年間で予算400万円を使う場合、ほかの業者なら伸びた後の話ばかりしますが、僕はそもそも伸びないことを前提に、最低でも400万円を回収できる転用法を考えるようにしています。もちろん伸ばすために全力でコミットしますが、同時に伸びない場合にも価値を享受いただけるようなセーフティネットを用意するんです。
――最後に、動画マーケティングの依頼を検討中の方にメッセージをお願いします。
SNSやWebに関することは、すべて僕に聞いてもらえればと思っています。やろうとしていることに効果が見込めないようであれば「やめとけ」とお伝えするので。WebでもSNSでも、いろんな施策とそれぞれに適した条件があるので、適応するかどうか事業全体を俯瞰して見極めることが大切です。一般的なYouTube代行業者ならなんでも「YouTubeやりましょう」というのかもしれませんが、僕の場合は、YouTubeが不向きだと判断すれば、断って別の施策を提案します。
このようにしてお客様にコミットし、時間を大量に使って多くの施策をやってきたことで、弊社には膨大な事例やノウハウが集まっています。それをキュレーションしてお客様限定で配信するので、お客様からは「僕と関わったら得しそうだな」と思ってもらえています。仮に現状の施策が伸び悩んでいたとしても「こいつと一緒にいたら何かやってくれそうだな」と感じてもらえることが理想です。