思い通りにいかない会社員時代を経て創業し、独自の強みを見出す
――創業されるまでのビジネスの経歴を教えてください。
大学卒業後は、イタリアのラグジュアリーブランドに入社し、約5年間営業職として勤務していました。私が所属していたのは、私以外の全員が課長職以上の幹部ばかりで構成されている、ヘッドオフィス的な部署でした。その環境に刺激を受け、経営の意思決定に関わる立場へのキャリアアップを目指すようになり、アシスタントマネージャーに昇進しました。しかし同時に、日本からイタリアにある本社に意見を通すことの難しさも痛感したのです。より経営層に近いポジションで働くため、インターネット関連企業に転職を決意しました。転職後は、広告営業や運用の部門に配属され、法人営業の経験を活かして、会社の業績拡大に貢献しました。入社後11か月で部長職に昇進、約2年で会社のナンバー3のポジションに就くことができました。その後、2010年に独立し、株式会社CFPコンサルティングを立ち上げました。
――アパレルからインターネット業界へと、異業種に転職を決めた理由は何ですか。
ラグジュアリーブランドで勤務していた時代は、直営店を担当していました。本社と同じビルに店舗があったことから、ゴールデンウィークやクリスマスなどの繁忙期には、販売応援で、お客様と直接接する機会があったのです。お客様の多くは、ある程度お歳を重ねられた方でしたが、その中で、若い年齢で高額なお買い物をされる方が一定数いらっしゃいました。そして、その多くがインターネット関連の会社経営者や役員の方であることに気付いたのです。まったく違う業界ではありましたが、自分が目指していた「経営の意思決定に関われるのではないか」と興味をもったのが転職を決めたきっかけです。
――インターネット業界で独立し、創業されるに至った背景を教えてください。
実は、独立・創業に関しては、成り行きで進みました。以前勤めていたインターネット企業は、韓国で上場している企業の日本支社でした。そこでナンバー3の立場にあった私が、より上に意見を通そうとすると、彼らが韓国の本社に問い合わせることが必要になり、決定が遅れてしまうことがよくありました。そのようなスピード感に対する疑問や、ほかにも経営陣と意見が合わないことが多々あり、結果として独立することになりました。そして、培った経験やスキルを活かして何かできることはないかという形で創業したのです。
――その後、15年間も会社を継続する上で、転機はありましたか。
時代に求められていたということもあり、7〜8期目くらいまで業績は伸び続けましたね。私たちは、インターネット広告を扱う会社として、運用からクリエイティブ制作、アクセス解析やタグ管理まで、幅広いサービスを提供していました。しかし、このように幅広く対応していると、業界の大プレイヤーと事業内容が似通ってしまいます。創業当初は、中堅や中小企業と競合していたので問題ありませんでしたが、会社が成長するにつれて、取り組むべき商談の規模も大きくなり、自然と大手企業と競合する機会が多くなっていったのです。まるで身長差が激しい選手と同じサッカーグラウンドで競うような状況です。そうして勝つことが次第に難しくなっていき、やがて業績が頭打ちとなりました。それが大きな転機となり、小さな身体でも戦っていける私たち独自の強みや、企業として果たすべき社会的責任について真剣に考えるようになりました。そこから事業内容を絞ったことで、幸いなことにまた成長することができています。
インターネット広告媒体の事前審査を徹底支援
――どのような事業内容に絞られたのですか。
法律分野の知識を習熟・活用し、インターネット広告媒体の事前審査をクリアできるようなクリエイティブ改善・リライティングサービスをスタートしました。主にご利用いただいているのは、医療機関、化粧品やサプリメントメーカー、製薬会社、保険会社、証券会社、クラウドファンディングのような、広告予算がありながら広告審査が厳しく、利益を上げることに苦労している業界の企業様が多いですね。このような企業様に対して、どのようにすれば効果的なパフォーマンスが得られるかというソリューションを提供しています。
――強社ポイントは何ですか。
医療広告ガイドラインや、薬機法、金融商品取引法、資金決済法などの法律の知識に基づき、圧倒的なデータベースを活用したフィードバックができる点です。1つの商材に対して、事業者様だけでなくクリエイターやアフィリエイターの方からも受注することが可能で、年間約10万件もの実績があり、業界では唯一の地位を築いているといっても差し支えがありません。また、2年前からは、この膨大な実績データをもとに、生成AIを用いたランディングページ制作ツールも開発しています。このツールは、商品のURLを入力するだけで、その商品がどのような年齢、性別の人に必要とされるかを分析し、画像を生成します。現在はモックアップの段階ですが、素晴らしいものができあがってきているという自負があります。
生成AIツールで資本主義の歪みを是正したい
――今後のビジョンを教えてください。
現在開発中の生成AIツールを、中小企業に広めたいと思っています。特に地方の中小企業は、優れた技術で素晴らしい商品をつくっているにもかかわらず、多くの場合それを効果的に売る手段をもっていません。いざ、ランディングページを制作して商品を売っていきたいと思っても、高額な費用がかかるために諦めてしまうケースが多いのです。当社のAIツールを使用すれば、外注に頼ることなく自社で販売力を向上できます。さらに、このAIツールは、グローバル市場への展開も可能です。法律や判例データ、国ごとの生活スタイルや宗教、気候、経済状況などをAIに学習させることで、世界中の地域に最適化させ、広めていきたいですね。
――事業を通じて果たしたい社会的責任について教えてください。
資本主義の歪みを是正することです。現在の資本主義のロジックでは、お金の多い地域には豊富な資源が届きますが、お金の少ない地域には必要なものが届かないという問題があります。私たちは、開発中のAIツールを活用することで、この不均衡を改善したいと考えています。具体的には「地方to地方」「地方toグローバル」という新しい流通システムをつくりたいですね。例えば、日本の場合、東京を中心とした大規模流通が地方の商品を見つけ、海外の大規模流通に提供し、そこから海外の地方に届く流れが主流です。この大規模流通をカットし、地方から地方へ直接製品を届けることができれば、より低価格で効果的に商品を配送し、市場を活性化させることができます。これまで培った技術や知見を、この変革を実現するための重要なステップにしたいですね。