Interview

デジタル名刺を起点に、DX時代の新たなプレーメーカーを目指す

liberty株式会社 代表取締役

中村 優太

Profile プロフィール

liberty株式会社 代表取締役

中村 優太

サッカー一筋の高校時代を経て、スイスの大学へ留学。コロナ禍に翻弄されつつも、それを逆手にとった「デジタル名刺サービス」を起点に、企業のDX化支援事業を展開している。

今回は中村氏に、事業の強みから今後のビジョンまでを伺いました。

プロを目指しサッカーに打ち込んだ青春時代

 ――生い立ちからの経歴を教えてください。

3歳からサッカーを始め、高校時代は強豪校として知られる実践学園でサイドハーフのポジションを務めました。サッカー一色の青春時代を送りましたが、プロのハードルは高いものでした。思うように道が開けず進路に悩んだ末、翻訳家の祖父に鍛えられた英語力を活かし、海外留学を決意します。また、元々リゾート地への旅行が好きだったということもあり、留学先は観光学やホテルマネジメントを学べるスイスの大学を選びました。

ところが、わずか3か月でコロナ禍によって帰国を余儀なくされてしまいます。急な留学中断は、自分の将来を見つめ直すターニングポイントになりました。悔しさを感じましたが、同時に日本でできることを何かやってやろうと奮起するきっかけにもなったのです。

――創業理由・背景を教えてください。

留学中、海外の学生が当たり前のように、自分の興味や課題意識に基づいてビジネスに取り組む姿に、刺激を受けました。単なるお小遣い稼ぎではなく、社会に新たな価値を生み出そうとする姿勢に驚きつつも共感したのです。コロナ禍の混乱の中で、これからの時代は個人で生き抜く力がいっそう問われるのではないかと考え、2020年にシステムの受託開発・導入の領域で事業を立ち上げ、2022年1月にliberty株式会社として法人化しました。

 

デジタル名刺を入口に企業のDX化を支援

 ――事業内容を教えてください。

現在の主力事業は、デジタル名刺サービスです。デジタル名刺とは、スマートフォンアプリを使って名刺交換ができるサービスで、オンラインでもオフラインでも活用でき、低コストかつペーパーレスというメリットがあります。特にコロナ禍において、非接触・非対面の名刺交換ニーズが高まったことで注目を集めました。

また、デジタル名刺にはWebサイトやポートフォリオ、商品紹介ページなどへのリンクを貼ることができるため、営業資料がない場面でもスムーズにビジネスの話を前に進められるようになります。つまり、従来なら名刺交換だけで終わっていたような関係を、デジタル上でもシームレスにつなげていくことで、ビジネスの加速や、遠方の取引先との関係構築などに役立てられるのです。

私がデジタル名刺に着目した背景には、企業のシステム開発や導入に携わる中で、コストの高さやIT人材の不足など、DX化のハードルの高さを感じたことがあります。その入口として、多くのビジネスパーソンにとって身近な「名刺」のDX化が適しているのではと考えたのです。デジタル名刺を制作することで、掲載する企業やサービスのWebサイトを整える需要が生まれます。そして制作のヒアリング時にお客様のお困りごとや課題をお伺いし、それを解決するシステム導入などのDX化提案に切り込んでいくのです。デジタル名刺は企業のDX化を後押しする重要な第一歩として位置付けています。

――事例や実績を教えてください。

おかげさまで、当社のデジタル名刺はさまざまな業界・業種のお客様に活用いただいています。カーボンニュートラルやペーパーレス化などのSDGsの活動は、今や大企業にとって必須の取り組みです。一例をあげると、トヨタ自動車では、SDGsの一環として2025年から紙の製品カタログを廃止する方針を打ち出し、営業担当者の名刺もデジタル化が進められています。関連する事例として、トヨタカローラの店舗では当社のデジタル名刺を導入いただいています。

特に、営業職の方からは「段取り良く商談を進められるようになった」という声をいただいています。特に、保険や金融、不動産など、商材の説明に時間を要する業界の方から好評ですね。

一方、デザイナーやクリエイターの方からは「ポートフォリオへの誘導がワンストップでできるのが魅力」という声が寄せられています。紙の名刺だけでは作品や世界観の魅力が伝わりにくく、デジタル名刺を通じて作品や実績を余すことなくアピールできるようになったと喜ばれています。

また、夜職の方からも「スマートで新鮮」「LINE交換が簡単になった」と、好意的な感想をいただいています。お客様との継続的な関係構築は、夜の仕事に従事する方にとって重要な課題です。その点、LINEなどのメッセージアプリへのスムーズな誘導が可能なデジタル名刺は、お客様とのコミュニケーションを円滑に進める上で、心強いツールになっているようです。

――強社ポイントを教えてください。

当社の強みは「コストを削減して『うみ(生み・膿)出す』」というコンセプトにあります。無駄なコストを削減し、生み出した原資を新たな価値創造に振り向ける。そのための第一歩として、デジタル名刺の活用があるのですが、本当の狙いはその先にある「本質的なDX」の推進です。

例えば、中小企業では、勤怠管理をいまだにExcelやタイムカードに依存しているケースが多くみられます。こうしたアナログな運用では、どこかで人の手を介する必要があるため、ミスや集計漏れが生じやすく、管理者の工数も余計にかかってしまいます。何より、勤怠の実態が厳密に管理できない仕組みは、サービス残業などの温床にもなりかねません。

つまり、勤怠管理のDX化は、コスト面だけでなくコンプライアンス経営の面でも不可欠といえるのです。勤怠管理を適切に行うことは、退職した従業員からの未払い残業代の過大請求といったリスクを回避する意味でも重要です。「コストを削減して『うみ出す』」という当社のコンセプトには、こうした”膿”を出して企業を守るという意味も込められています。

浮いた原資を新規事業立ち上げや人材投資に回すことができれば、新陳代謝を繰り返しつつイノベーションを起こす「本質的なDX」の成果を手に入れられるはずです。こうしたシナリオを、デジタル名刺から積み上げていくのが、当社の役割だと考えています。

ほかにはIT導入補助金の申請サポートなども提供しており、DXの階段の1段目をできるだけ低くすることで、お客様の背中を押しています。

諦めない心で日本と世界をつなぐDXビジネスを

 ――今後のビジョンを教えてください。

日本と海外の「食」をつなぐサービスを立ち上げたいです。「食」は日本の強みのひとつ。しかし私は、ヨーロッパの日本食レストランで提供される料理のクオリティの低さに愕然としました。現地の日本食レストランの多くは、日本人経営者不在で運営されており、その結果、いわゆる「SUSHI」といった、「寿司」とは似ても似つかない料理が横行しているのです。この状況を打開すべく、海外の日本食レストランの経営・マーケティング支援、さらには日本人シェフと現地レストランのマッチング支援などにも携わっていければと考えています。

また現在の円安局面は、日本人が海外で活躍するまたとないチャンスともいえます。ワーキングホリデーに行く方も増えるでしょう。そこで、デジタル名刺を活用した日本人材と海外企業のマッチングサービス、さらには日本人の海外就職・転職支援なども視野に入れています。人材の流動を促進するサービスを展開していきたいですね。

――仕事上で大切にされていることを教えてください。

サッカー一筋の高校時代に得た最も大切な財産は、諦めない心です。ビジネスでは、理不尽や苦境に直面することも少なくありません。それでも「うまくいくまでやり続ける」というモットーを胸に突き進んできました。
同時に、留学経験からも多くの学びを得ました。常に海外を意識し、新しいものを貪欲に吸収する好奇心、国境を越えて飛び回る行動力、そして、多様な価値観を受け入れるフラットな心。こうしたエッセンスもまた私の大切な財産です。

日本と海外の懸け橋となり、起業家としてDX時代の新たなプレーメーカーとなることが私の夢です。応援してくださる皆さまとともに、この道を進んでいきたいですね。

Companay Data 企業情報

会社名 liberty株式会社
事業内容 デジタル名刺、勤怠管理システム、補助金申請サポートなど。
強社ポイント デジタル名刺を入口とした、取り掛かりやすく本質的なDX推進。
オフィス住所 神奈川県川崎市高津区二子3-25-6

オープンブルーム二子101

URL https://lit.link/YutaNakamura

Personal Data パーソナル情報

氏名 中村 優太
出身 東京
趣味 サッカー、フットサル(一緒にプレーできる仲間を募集中です!)、サウナ、旅行

Interview その他のインタビュー

Stepwise会計事務所 公認会計士・税理士

大川 久幸

株式会社アカシア 代表取締役

岡本 陸哉

本気ファクトリー株式会社 代表取締役

畠山 和也